ホールソーだとリング幅を細かく調整できない
以前、ホールソーを使って板をドーナツ状に切り抜く方法を紹介しましたが、この方法だと外側や内側の穴経を細かく調整することができません。
最近、リング部分の幅が太いものを作る機会があったため、今回は自在錐を使って任意のサイズのリング幅でドーナツ状に切り抜く方法をシェアします。
一般的に自在錐でドーナツ状に切り出す際は、大きい円を先に切り出し、その切り出した円を固定してから小さな穴をあける手順をとりがちです。しかし、この記事で紹介している方法であれば、一度の固定で簡単かつ効率的にドーナツ状に切り抜くことができます。
自在錐とは?
自在錐とは、電気ドリルやドリルドライバなどに取りつけて大小の穴をあける先端工具の一種で、スターエムの自在錐や神沢鉄工の自由錐といった有名メーカーの製品が広く使われてきました。
しかし、最近では割安なメーカーの製品も多く出回り、安価で入手できるようになっているようです。ただし、切れないという批判レビューも散見されるため、有名メーカーの両刃の錐をおすすめします。
大きな穴をあけられる先端工具にホールソーがありますが、自在錐は刃の位置をスライドさせることができるため、穴の直径を自由に調整できる特長を持っています。
例えば、わたしが所持しているスターエムの36の穴あけ可能範囲は30~120mmですが、別売されているロングバーに交換すれば、最大300mmの穴経を切り抜けられます。
自在錐で効率よくドーナツ状に切り抜く方法
作業台を削ったりしないように分厚い捨て板を用意します。
捨て板の上に加工する板を乗せてクランプでしっかりと固定します。
真ん中のドーナツホールとなる穴あけサイズをセットして切り抜いていきます。
ここでは18Vのドリルドライバーを使用していますが、ボール盤で先ネジタイプのセンタードリルを使用すると材料を持ち上げて危険なため、ネジ部を鉄工ヤスリで削る必要があります。
内径の穴を切り抜いたら、外径のサイズにセットし、捨て板にあいた穴にセンタードリルを差し込み切り抜いていきます。
34秒で厚さ約10mmの檜からドーナツ状の板をくり抜くことができました。穴あけサイズを調整する工程のほうが時間がかかるため、効率を重視する場合はホルダーを蝶ネジで固定している神沢鉄工の自由錐のほうが適切かもしれません?
実際に上記の方法でドーナツ型に切り抜いた動画はこちらからどうぞ。
片方の刃をずらしたら一発でドーナツ状に切り抜ける?
自在錐の片方の刃をずらしたら、刃幅の調整をせずに一発で切り抜けられるのではと思ったので試してみました。メーカー(スターエム)が推奨している使い方ではないので、安全性や製品保証に関しては自己責任となります。
ドーナツの外側と内側の側面を地面(水平面)に対して垂直に切り抜く場合は、内刃を外側に、外刃を内側に配置する必要がありました。逆にすると、右画像の様にドーナツの外側と内側の側面に傾斜がついてしまうからです。
結果、外刃より内刃が先に貫通してしまい、真ん中の穴(ドーナツホール)を切り抜くことができませんでした。ちなみに、刃を反対にしても同じ結果でした。
そこで、センタードリルと外刃の間にビスを打って、捨て板と切り抜ける材を固定することにしました。これで先に外側が切り抜けても、切り抜かれた部分は固定されるため、ドーナツ状に切り抜けるはずです。
一発でドーナツ状に切り抜けましたが、切り抜くのに時間がかかりました。また、切っている最中に焦げ臭くなり白い煙がでてきて、切り抜いた材の側面も黒く焦げました。外刃が(ケガキ)、内刃が(スクイ)の役割を担っているので、この様な使い方をしていると効率が悪いだけでなく、刃の寿命が縮むので前述した方法で加工したほうがよかったです。
注意点
左右からクランプでしっかり固定する
材料を左右からクランプでしっかりと固定する必要がありました。通常の使い方より負荷がかかり、材料が動きやすくなるからです。加工中に材料が動くと切り抜ける材が割れたり、固定している材料が回転して危険でした。
リング幅が狭いと脆い材は加工中に割れやすい
内刃と外刃が近すぎると加工中に切り抜く材が割れることがありました。特に杉の様な脆い種類の材が割れやすいので、脆い材を使用する場合は、リング部分をある程度広げたほうがよいでしょう。
ボール盤で先ネジタイプのセンタードリルを使用すると危険
ボール盤で先ネジタイプのセンタードリルを使用すると、材料が持ち上がろうとして危険でした。付属されている長いセンタードリルをボール盤で使用する場合、ネジ部をヤスリで削る必要があります。
まとめ
ホールソーでドーナツ状に切り抜く場合、リング幅の微調整ができませんでした。しかし、自在錐を利用することで大小さまざまなサイズのドーナツを切り出せることができました。ただし、内刃と外刃をずらして切り抜く方法はメーカー非推奨で、安全面・効率面に難がありました。ドーナツ状の材料をスムーズに切り抜くには、捨て板にあいたドリル穴をガイドとし、内径と外径をそれぞれ別工程で加工するほうが安定しやすく、焦げや刃の負担も軽減できました。
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