新聞紙圧縮成形薪をつくる段
コーキングガンと塩ビ管でダンボール圧縮成形薪を作った動画を公開したところ、オガクズだけでなく「新聞紙でもできる?」というご質問も多くいただきました。また、複数の方から新聞紙を使ったペーパーログ(紙薪)の存在についても教えていただきました。そこで、今回は新聞紙を材料にして、コーキングガンと半割塩ビパイプを使い、新聞紙の圧縮成形薪を作ってみることにしました。
新聞紙を薪にする準備
まずはじめに、成形時に繊維同士を絡みやすくするため、新聞紙はシュレッダーで細かく裁断しました。
次に新聞紙の繊維を柔らかくして、さらに繊維同士をより絡みやすくし、圧縮時の密度を高める目的で、裁断した新聞紙に熱湯を注ぎ、一晩放置しました。
柔らかくなった新聞紙は、電気ドリルにペイントミキサーを装着して撹拌すると、あっという間に紙片の形がなくなり、泥のような状態になったことから、新聞紙はダンボールと異なり、短時間で繊維がほぐれることがわかりました。
実際に新聞紙の厚さを測定すると0.06mmと、身近にある紙の中でも非常に薄いことがわかりました。そのため、0.05mm前後の紙の場合は、シュレッダーで細かく裁断したり、長時間の水浸けは必要ないかもしれないと感じました。
目の細かい洗濯ネットに濡れた新聞紙を入れて水気を切りました。
タネを圧縮成形する
泥状新聞紙
今回は、少し長めの薪を作れる構造の半割塩ビ管をコーキングガンにセットし、新聞紙を圧縮しながら成形を行いました(詳細な作り方が知りたい場合は、下のリンク先からどうぞ)。

半割塩ビ管の開放型構造によって、成形物は型から容易に取り出すことができるため、取り出し時に欠けや割れが発生することも少なかったです。
雑に扱っても割れにくく、高いところから落としても破損しにくい強度があるため、乾燥工程における持ち運びや並べる作業もスムーズに行えました。簡単に手で折ることはできるものの、強い結合力を感じました。
乾燥中はひび割れが発生しにくかったです。乾燥後には木のように固くなり、強い衝撃を与えても割れないほど結合力が強くなりました。
とはいえ、手で折ることは可能なため、ナタ・斧・鋸などの刃物を使わずに使いやすいサイズに調整できます。
短冊状
新聞紙の場合、シュレッダーで裁断して1日水に浸けた短冊状態のものでも、手で強く握ると崩れにくく、固い状態を維持できたので、ある程度強い結合力を感じました。そこで、シュレッダーで裁断した状態のままでも、圧縮成形薪を作ってみることにしました。
泥状に比べて繊維同士の絡みがやや不均一となりました。ただし、全体としては成形物は十分な強度を持っており、多少雑に扱っても割れたり・欠けたりしにくかったです。
ただし、コーキングガンの圧縮力では、圧縮直後から部分的に繊維のまとまりが弱い箇所が生じ、細かいひび割れや剥離が発生しやすいので、丁寧に扱いながら乾燥させる必要がありました。
これは湿潤状態のときに、端を片手で持ち雑に扱っていたところ、無数にあるヒビの一箇所が広がり、割れてしまったものです。
乾燥後は泥状に比べて粗い仕上がりになりました。乾燥中にひび割れが広がったりするものもありましたが、高いところから落とした際の衝撃にも耐える強度のため、雑に扱っても割れたりすることはないでしょう。
また、泥状のものより、軽い力で手で折ることができたため、薪を割る刃物を使わずに使いたいサイズに調整することも可能です。
新聞紙1日分から作れる成形薪の推定本数
タジマのコーキングガン(CNV-JUST)と呼び径40のVU塩ビ管を使い、乾燥時に約300gの量の新聞紙を成形したところ、成形物の足した全長は約610mmとなり、およそ長さ100mm、太さ44mmの薪が6本程度得ることができました。
日経新聞によれば、新聞紙1日分の重さは210~230g程度だそうです。そのため、新聞紙1日分から4本〜5本程度の長さ100mm・太さ44mmの成形薪が作れる計算になります。
燃焼テスト
初期着火性
泥状にした新聞紙と、短冊状のままの新聞紙をそれぞれ圧縮成形薪に仕上げ、燃焼させるとどう違うのかも気になるところです。そこで、双方の圧縮成形薪を比較しながら、同時に燃焼させてみることにしました。
まず、泥状と短冊状それぞれの新聞紙圧縮成形薪がどの程度燃えやすいかを確かめるため、バーナーであぶって火の付きやすさを比較しました。
結果はダンボール圧縮成形薪と同様にどちらもすぐに火が消えてしまいました。火がつきやすそうな短冊状の新聞紙を使って圧縮成形した薪も、密度を高くしてしまうと、内部まで酸素が届きにくいようです。表面は燃えるものの、酸素や熱不足によりすぐに火が消えてしまうため、焚き付け材としては適していませんでした。
七輪(一次燃焼)熾火状態へ投入
直接火をつけてもすぐに消えてしまったため、次に七輪に投入して検証を行いました。七輪内に熾火状態の炭を用意し、泥状の新聞紙をタネにした成形薪と、短冊状の新聞紙をタネにした成形薪の両方を同時に投入し、燃え方や燃焼時間を比較しました。
有炎燃焼時は、どちらも広葉樹の様な穏やかな炎をあげて約13分ほど燃え続けました。その後、約2分ほどは暗くしないと炎が見えないような、ごく小さく控えめな炎が残り、やがて熾火状態へと移行していきました。
泥状の新聞紙をタネにした成形薪の方が、見た目としては長く燃焼しそうな印象がありましたが、実際の燃焼時間に大きな差はなく、どちらも同程度の時間で火が安定して燃え尽きる結果となりました。
炎が消えて薪の表面に灰がかぶりましたが、芯の部分が赤く燃えている無炎燃焼は約30分ほど持続しました。動画にはしていませんが、送風口を閉じて灰をかぶせたものは数時間の無炎燃焼が続きました。この煙や臭いが少ない熾火は、遠赤外線の効果でムラなく食材に火を通せるため、七輪や囲炉裏での保温調理など、じっくりと火を通す煮込み料理に最適です。
送風式ウッドガスストーブ(二次燃焼)熾火状態へ投入
一次燃焼の火力だと調理に時間がかかるため、送風式ウッドガスストーブ(二次燃焼)に小さい成形薪を4コ投入し、風量を中に設定したところ、約4分間はロケットが噴射するような勢いのある炎を伴う燃焼が続きました。その際には火の粉が勢いよく立ち上がる様子が見られたので、火事にならないように注意や対策が必要でした。
その後は可燃ガスの発生量が少なくなり、火力を維持できなくなったため、風量を小に切り替えると、さらに約9分30秒にわたって落ち着いた炎が穏やかに燃え続けました。この際、火の粉は見られなくなりました。
このストーブの場合、最初の火力が10分ほど持続すれば2L程度の水を沸騰させることが可能であるため、酸素を大量に供給できる火力の強いストーブと組み合わせれば、新聞紙圧縮成形薪は麦茶の量産体制時や、ラーメンやチャーハンなど短時間で調理できる料理の用途にも十分活用できる火力を備えていると感じました。
なお、この二次燃焼ストーブを使用しても、完全燃焼には至らず、ヤカンや鍋に煤が付着しました。調理器具に煤を付けたくない場合は、五徳の上に鉄板を置くことで、煤の付着を抑えながら調理を行うことができます。
有炎燃焼後は熾火状態に移行し、無炎ながらも赤熱を保ちつつ燃焼が続きました。なお、熾火の持続時間については今回測定していませんが、数十分ほど赤くなっていることを確認したので、酸素の供給量を減らせば、調理の保温や煮込みの火加減として活用できます。
動画で見たい方はこちら
記事と同じ内容を、動画でもご覧いただけます。実際の作業手順や燃焼の様子を映像で確認したい方は、ぜひこちらのYouTube動画もあわせてご覧ください。
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