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卓上回転バレル研磨機を改良して色々なサイズの容器を回せるようにする方法

KTシリーズ(卓上回転バレル研磨機)の欠点

卓上回転バレル研磨機の欠点

研磨槽(桶)のサイズを選べない…

Amazonなどで販売されている安価な卓上回転バレル研磨機は、固定された4つのガイドローラー上で研磨槽を回しているため、ローラーの幅に合ったサイズの研磨槽しか使用することができない。付属されている研磨槽と異なるサイズの容器を回すことができないのがネックとなる。

一方、原料などを粉砕したり撹拌するポットミル機は間隔を調整できる長い丸棒の上で回転させているため、色々な容器のサイズを回転させることができる。そこで卓上回転バレル研磨機もポットミル機のように色々なサイズの容器を回すことができるように改良してみることに。

色々なサイズの研磨槽を使えるメリット

研磨槽のサイズの比較(KT6808-KT200-KT3010)

  • 小さい容器だとメディアの量を軽減できる
  • 小さい容器だとコンパウンドの消費を軽減できる
  • 大きい容器だと大きい工作物を研磨できる
  • 大きい容器だと量産性を向上できる
  • 大きい容器だと研磨能率を向上できる
  • 予備研磨槽を経済的に用意できる
  • 予備があるとメディアを入れ替える手間が省ける

付属されている研磨槽より小さな容器や大きな容器を回転させることができれば、メディアやコンパウンドの消費を軽減したり、逆に量産性を向上させることもできるメリットが得られる。

その他に経の大きい容器だと、マス表面上に形成される流動層の幅を長くできるため、研磨能率を向上させることも可能。大きな研磨槽を走らせているガラ屋さんの研磨能率に近づける!?

さらに、色々なサイズの予備研磨槽を経済的に用意できるのも嬉しいポイント。例えば、KT2000の研磨槽は約5,000円で販売されているが、同じくらいの大きさの円柱容器だと約1,000円ほどで入手可能。

改造方法

回転バレル研磨機(KT6808/RT04)

今回使用する回転バレル研磨機はKTシリーズの中で一番小型のKT6808(RT04)を使用。KT6808は指輪のような大きさの工作物をバレル研磨するにはちょうどいいサイズだが、5cmほどの工作物を複数研磨する用途には研磨槽が小さすぎて研磨能率が低下する。

このため、大きい工作物を研磨しようとしたり、ワークの量を増やしたときに、大きいタイプを選んだほうがよかったと後悔している人がネット上で散見される。なので、今回の課題は小型のKT6808で同シリーズの中型(KT2000)大型(KT3010)用の研磨槽を回すこと。

回転バレル研磨機-改造(板の貼り付け)

上記の寸法の板(A)を2枚用意。本体の仕様が変わっているかもしれないので、上写真の様に板(A)を本体の上に置き、研磨槽を回した時に板と接触しないか確認したい。

回転バレル研磨機-改造(土台)

厚み約20mmの板(B)を用意。奥行きはKT6808と同じ197mm、幅は余裕を持って360mm以上の寸法で切断したい(写真の板の幅は445mm)。
写真は一枚板ではなく、5枚の1×4材を継いでいるが、反ってたのでやはり1枚板したほうがよかった。

回転バレル研磨機-改造(板に穴あけ)

板(A)と板(B)を重ね合わせ、ドリルドライバーに木工用錐を取り付けてΦ10mm前後の穴をあける。穴は板(B)に貫通させても無問題。

回転バレル研磨機-改造(板を接着)

穴をあけた板(A)を本体にエポキシ樹脂か強力両面テープで接着。
今回はセメダインの[ハイスーパー5]で接着。両面テープで接着する場合は、3Mの[スコッチ 超強力両面テープ]が強力だったのでおすすめ。

丸棒 切断

前工程であけた穴と同じ経の丸棒を約20mmでノコギリで切断(×4)。

回転バレル研磨機-改造(丸棒)

切断した丸棒を板(A)に木工ボンドを塗布して差し込む。

回転バレル研磨機-改造(土台の取り付け)

木工ボンドが乾燥したら板(B)の穴に丸棒を差し込む。この天板は着脱できるようにするため、木工ボンドは塗布していない。

回転バレル研磨機-改造(脚の寸法)

寸法を確認して板(B)の左側の脚をつくる。

回転バレル研磨機-改造(脚の接合)

作った脚を板(B)に接合する。

回転バレル研磨機-改造/ピロー型ユニット(軸受ユニット)

 ピロー形ユニット(軸受ユニット)を板(B)にネジ止めする。


回転バレル研磨機-改造(ステンレス丸棒Φ8mm)

Φ8mmステンレス丸棒を任意のサイズに切断する(モノタロウで購入)。
丸棒の経は15mm前後あったほうが最適だと考えられる。丸棒の経が小さいと軽い容器を回した時に転げ落ちることがあるからだ。その場合、前述した軸受ユニットや、後述するビニールチューブやプーリーのサイズを大きいものに変更する必要がある。ちなみに、10mmの丸棒にアズワンのビニールチューブ(10×14)をかぶせるとΦ14mmとなる。

丸棒にビニールチューブをかぶせる

丸棒に内径8mmのビニールチューブを差し込む。
ビニールチューブを最後まで差し込むにはモンキーレンチか、穴のあいた工具などが必要になります(動画参照)。

軸受ユニットに丸棒を固定

丸棒をベアリングに差し込みイモネジを締めつけて固定する。

タイミングプーリ(U溝プーリー代用)

丸棒にプーリーを取り付ける。
60歯(底溝径38mm)のタイミングプーリーを代用。
自作したい場合はこちら(木製プーリーの作り方)を参考。
内径8mmのU溝プーリーの入手が難しかったので、3Dプリンタ用のタイミングベルトプーリーで代用。タイミングベルト用だがウレタンベルトをかけて回転伝達ができた。被動プーリーは高負荷に耐えられるように、駆動側のプーリーより外径が大きいものを選びたい(大きさに比例してトルクが向上するが、それだけ減速するので注意)。

タイミングプーリ(ウレタン丸ベルト)

面外への回転伝達ができるウレタンベルト(丸ベルト)をプーリーにかけて完成。
丸ベルトはΦ4mmのサイズを使用。やや割高となるが、色がオレンジより緑ののほうが溶着が簡単なうえ、何日も延々と回転させたときに切れにくかった。丸ベルトの熱溶着方法はこちらの動画を参考にして頂ければ幸いです。

実際に他のサイズの容器を回してみた

1L容器(アズワン-クリア広口瓶)

アズワン-クリヤ広口瓶(1L)

経の小さい容器は梱包などに使われる太いゴムかウレタンベルトを巻きつけないと回転させることができなかった。また、重量が軽いと丸棒から転がり落ちてしまうため、水を入れない乾式バレル研磨での使用はむずかしい。丸棒の経が15mmだと装入量に関係なくうまく回転した。

KT6808のバレル槽(小サイズ)

KT6808の研磨槽容器(小サイズ)

標準付属されているKT6808専用の研磨槽は問題なく回すことができた。もし転がり落ちると割れるかもしれないので、心配なら落下防止の柵を設けたほうがよいかもしれない。

KT2000専用のバレル槽(中サイズ)

KT2000の研磨槽容器(中サイズ)

中サイズであるKT2000専用の研磨槽も問題なく回すことができた。マス(メディア+ワークの塊)の装入量を容器に対して50%にすると、KT6808専用の研磨槽より流動層が長くなるため、研磨能率が向上する。

KT3010専用のバレル槽(大サイズ)

KT3010の研磨槽容器(大サイズ)

大サイズのKT3010専用の研磨槽も回すことができた。マス表面上に発生する流動層が一番長くなるため、KT2000専用の研磨槽より研磨能率が向上するだろう。量産性を向上させたい場合や、研磨効率を向上させたい場合は迷わず大きい研磨槽を使いたい。

プロテインが入っていた容器

プロテインの容器

プロテインが入っているような大きな容器もウレタンベルトを巻きつけることで回転させることができた。バレル研磨専用の研磨槽は割高なので、予算を抑えたい場合は他の用途で使用されている円柱状の容器を使いたい。この容器も重量が軽いと転がり落ちることがあった。

容器が移動して転がり落ちる対処法

回転バレル研磨機の容器が移動する対策
実際にモーターが焼けないか各サイズの容器を回転させていたところ、容器が左右のどちかに少しずつ移動するものがあった。そのまま放置していると、容器がビニールチューブの上から落ちたり、ユニットとぶつかったときにバランスを崩しながら転がり落ちる問題が発生した。

この容器が移動する方向は、丸棒の回転方向を変えたり、容器を置く向きを変えることで、変えられることができたので、台の片側に自作した固定車のようなものを設置することで、容器の移動を止めることができた。既製品であれば「固定型キャスター」や「ボールキャスター」で対処可能。

回転スピードの変化

駆動側より被動側のプーリーの外径を大きくしているため、研磨槽が回転するスピードは改良前より減速した。しかし、個人的な用途ではKTシリーズの回転スピードは1でも速いと感じていたので、最適な回転スピードの調整がしやすくなった。

ちなみに回転スピードを落とすと、研磨能率が低下するデメリットがあるが、工作物同士の打痕がつきにくくなるメリットが存在。その他に仕上げ状態が向上するため、光沢をだす工程では回転スピードは落としたほうがよかった。

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