扱いやすく燃やせるダンボール薪を自作してみた
毎日のように角材の端材が出るため、それらをウッドストーブや七輪の燃料として活用しています。そうした生活のなかで、ネット通販などで増えていくダンボールも、なんとか燃料として使えないかと考えるようになりました。ただ、ダンボールはそのまま燃やすとすぐに燃え尽きてしまい、灰も舞いやすく扱いづらい。そこで、より実用的な「ダンボール薪」を自作する方法を試してみることにしました。
コーキングガンと塩ビ管で作る自作ミニ薪成形機
必要なもの
ウッドストーブや七輪に太くて長い薪は使いにくいので、直径40mm、長さ50~100mmほどの小さい薪を作る必要がありました。
他の方の動画を参考にする中で、手で型に詰めて押しつぶしたり、圧縮に使われている治具がやや非効率に感じられたため、より簡単かつ効率的に圧縮と成形を行う方法として、長さ19cmのVUパイプ(呼び径40)とコーキングガンを組み合わせた仕組みを採用することにしました。
圧縮する際に底がないとダンボールが下から飛び出すため、同じ呼び径(40)のVUキャップを用意する必要もありました。
パイプとキャップに排水穴を加工
水を吸ったダンボールを圧縮すると、中から大量の水分がにじみ出てきます。その際、水の逃げ場がないと圧縮効率が下がってしまうため、パイプとキャップに排水用の穴をあけました。穴の直径は約40mmで、10mm間隔で複数あけました。
ドリルドライバーでの穴あけ作業では、ドリルの刃が塩ビのつるりとした表面で逃げやすく、狙った位置に穴をあけるのが意外と難しいと感じました。たくさんの穴をあける必要があるため、センターポンチでくぼみをつけるのは非効率なので、私は先端が細くなっているタイプの下穴用ドリルを使いました。
後で気づきましたが、先端が細く尖った三角錐状の木工用ドリルのほうが、刃が滑らず塩ビとの相性が良好でした。
その他に半田ゴテを使えば手早く穴を開けることもできますが、裏側に大きなバリが発生しやすく、圧縮されたダンボール薪が穴に引っかかって抜けにくくなるというデメリットがあるため不向きでした。
圧縮時にキャップを外せなくなる対処法
圧縮したダンボールをパイプから取り出す度にキャップを取り外す必要があります。しかし、圧縮時にキャップが強く押し込まれて外しにくくなるため、キャップがはまり込む外側部分の接触範囲だけをグラインダーに多羽根ディスクを取りつけて削り、パイプの肉厚を部分的に薄くしました。
圧縮ムラを防ぐためプランジャーの直径を拡張
コーキングガンのカートリッジプランジャーの直径は42mmでしたが、パイプ内径(44mm)に対してやや小さかったため、圧縮時にダンボールの中心部にはしっかり力がかかるものの、先端の外側部分がうまく圧縮されずに崩れることがありました。
使用には支障ないレベルではあるものの、見た目や密度の均一性を高めるため、外周部分にも均等に圧力がかかるよう、プランジャーを固定しているナットを外し、自在錐を使って直径43mmの円に切り抜いたアクリル板を取り付けました。
密度の高いダンボール薪を作るための前処理方法
ダンボールや紙を燃料として使うと、薄くて軽いため一気に燃え上がるメリットがある反面、燃焼時間は針葉樹より短く、ふわふわした灰が飛びやすいというデメリットもあります。
細かく裁断したダンボールを圧縮して固めれば、通常のダンボールより密度が高くなるため、木の薪のように燃焼がゆっくりになり、繊維同士が絡んで灰がまとまりやすくなることで、灰の飛散を抑える効果が期待できます。
ダンボールを手でちぎると非常に手間と時間がかかってしまいます。そこで、私は家庭用のシュレッダーを使ってダンボールを裁断しました。一般的な家庭用シュレッダーでも、あらかじめダンボールの幅を細くカットしておけば、問題なく裁断することができました。
ダンボールを薪として成形する前に、まず水にしっかり漬けて柔らかくします。乾いたままでは硬くて圧縮しづらく、うまく成形できないためです。3時間ほど水に漬けることで繊維がふやけ、手や道具で押し固めやすくなります。
裁断して水に浸けたダンボールを、自作したミニ薪成形機で圧縮してみました。しかし、うまく圧縮されておらず、成形後の薪はしっかり固まっていない状態で、軽い力で引っ張るだけで簡単に崩れてしまいました。これは、繊維が大きくばらついていたため、圧縮しても隙間が多く、全体に均一な力がかからず、密着が不十分だったと推測されます。
そこで、繊維同士がより密着しやすくなるよう、裁断したダンボールをミキサーにかけました。
しかし、一度に処理できる量が限られているため手間がかかり、効率が悪く感じました。そこで、塗料を撹拌するためのペイントミキサーを電気ドリルに取り付け、さらに細かく砕く方法を試してみることにしました。
10Lのバケツに満杯まで入る量の裁断ダンボールを水に浸け、ペイントミキサーで攪拌したところ、約5分ほどで繊維がほぐれてドロドロの状態になり、圧縮しやすそうな状態に仕上がりました。なお、ペイントミキサーにはさまざまな種類があるようなので、用途に合ったものを選べば、さらに短時間で効率的に細かくすることも可能かもしれません。
その後、ドロドロになったダンボールを洗濯ネットに入れ、水気を軽く絞って濾しました。ただし、あまり強く水分を絞りすぎると、後の圧縮工程で繊維同士がうまく密着せず、まとまりにくくなるため、適度に水分を残しておくことが、きれいに圧縮成形するためのポイントです。
このドロドロになったダンボールを自作したミニ薪成形機に詰めて圧縮してみたところ、塩ビ管から圧縮したダンボールが抜けなくなってしまいました。そこで、塩ビ管を締め付け力の強いクランプでしっかり固定し、押し出して取り出しました。
ドロドロになったダンボールの場合、先述したシュレッダーで裁断しただけのものと比べると、明らかにしっかりと圧縮され硬く成形されました。見た目も市販されている大鋸屑薪のように表面も滑らかで、全体的に綺麗な円柱状にまとまりました。
圧縮させたダンボール薪を実際に手に取ってみると、落としたり転がしたりしても形が崩れず、十分な強度があることがわかりました。この成形精度と強度を活かせば、素材を変えることで種まき用の培養土ポットや、キノコ栽培用の菌床など、燃料以外の用途にも応用できる可能性がありそうです。
ちなみに、きれいに成形するコツは、斜めに動こうとする塩ビ管をまっすぐな状態でしっかり固定し、コーキングガンを何度もゆっくりと握って圧力を加え続け、水分がにじみ出るまで丁寧に圧縮することでした。この方法で成形したところ、10Lのバケツ一杯分の裁断ダンボールから、直径約4cm、厚さ7cm前後に圧縮されたダンボール薪が約10個できました。
完成した薪の量は思ったより少なく、作業にかかる手間を考えると、ダンボールをもっと大量に溜めてからまとめて成形したほうが効率的だと感じました。また、ものぐさな人であれば、わざわざ圧縮せずにそのまま手で丸めて使ったほうが効率的かもしれません。ただし、この場合は圧縮率が下がるため、火持ちに違いが出る可能性があるかもしれません。
圧縮ダンボール薪の燃え方
今回、自作した圧縮ダンボール薪を試しに燃やしてみたところ、火のつきは非常に良く、簡単に着火できました。ただし、着火後は長いあいだ炎は燃えあがらず、木炭のようにじわじわと炭化していく燃え方のため、ダンボール薪単体で焚き火をすることは難しく感じました。
燃焼時間は炭よりも短めで、大きめに成形すれば1時間ほど燃え続けそうな感触はありましたが、実際には小さい形状のため、20分ほどで燃え尽きました。ちなみに送風式ウッドガスストーブで使用した場合は、送風レベルにもよりますが、5~10分程度で燃え尽きる結果となりました。
燃焼中の炎の勢いは、針葉樹どころか広葉樹薪にも満たないほど穏やかで、激しく燃え上がるというよりは、静かに炭化していくイメージです。灰については、ふわふわと飛び散ることは少なく、まとまった状態で残るため、後始末もしやすいと感じました。さらに、煙やにおいも一般的な薪に比べると控えめで、屋内でも使いやすそうです。
なお、今回は梱包用のダンボールを使用しているため、ノリやテープなどの成分が混ざっており、直火で食材を焼く用途には適しません。しかし、鍋を使った湯沸かしや煮炊きなどには、薪と併用すれば問題なく使えると感じました。実際、私はこの薪(端材)とダンボール薪を併用して、毎日麦茶を煮出すのに活用しています。
まとめると、圧縮したダンボール薪は木炭の様な燃え方をするので、ダンボール薪単体で火を起こすことは難しいです。しかし、火力は弱いもののじわじわと燃え続けるため、火持ちを延ばす補助燃料として活用できます。燃え尽きる時間が短い薪とダンボール薪をうまく組み合わせて使うことで、燃料費の節約に大きく貢献できそうです。また、煙や匂いが少なめで、灰も飛び散りにくいため、メイン薪の節約用のサブ燃料から湯沸かし・煮炊き用の安定した火力源としても適していると感じました。
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