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性能比較表 |
インバーター制御だから出力電流が安定
スズキッドが販売している直流インバーター溶接機の中で一番安価な溶接機です。本体の質量は、5.5kgと片手で持ち運べるほど軽いので、家で使うにはピッタリのサイズです。
定格一次電圧(100V)定格一次入力(2.2kVA)なので、条件によっては家庭用コンセントで最大能力を発揮できない場合があります。100Vで使用できる手棒溶接機をお探しで、予算に余裕があり綺麗な溶接をしたいのであれば、交流溶接機(ホームアークナビプラス)より、インバーター制御で出力電流が安定しているアイマックス60のほうがおすすめです。電流が安定しているので、スパークやアークの発生が誰が使ってもわかるほど安定しているので、ストレスのかからない溶接作業が行えます。また、ダイヤル1つで出力電流を調整できる機能も備わっているので、溶け込みの深さを調整したり溶接棒にあった電流調整がおこなえます。
アイマックス120との違い
家庭の100V電圧で溶接を行なう場合、使用できる溶接棒のサイズが2.0mmまでと限られてしまうので、これ以上の上位モデルを選んでもメリットはないと思っていましたが、1つ上のアイマックス120は100V/200V兼用ですが、100Vで使用した場合、使用率が100%と記載されていたので、連続使用しても本体を休止させる必要がないようです。このアイマックス60は、使用率が20%なので、2分間も連続溶接すると使用率オーバー防止機能が働き、8分ほど休止しなければいけません。なので、連続使用するような用途の場合は、100/200V兼用のアイマックス120を選んだほうがよいと思います。(価格は高価になります。)
溶接棒サイズ | Φ1.4mm | Φ1.6mm | Φ2.0mm |
溶接できる板厚 | 0.8~1.2mm | 1.2~3.0mm | 2.0~4.0mm |
溶接棒と板厚の目安
溶接棒のサイズは入力電流が20A以上になってしまうので、100V電源で使用する場合は、1.4~2.0mmの溶接棒しか使用できません。1.4mmは板厚0.8~1.2mmまでに対応、1.6mmは板厚1.2~3.0mmまでに対応、2.0mmは板厚2.0~4.0mmまでに対応します。2.0mmの溶接棒を使用した場合、入力電流が20~22Aになるので、家のコンセントから溶接しているとブレーカーが落ちるかと思いましたが、2.0mmの溶接棒でも問題なく溶接することができました。
溶接ビードも幅が広くしっかりしたものになるので、100Vで2.0mmの溶接棒を使いたい場合は、直流インバーター溶接機のアイマックス60やアイマックス120を選んだほうがよいでしょう。
交流溶接機(ホームアークナビプラス)では1.6mmまでの溶接棒しか使用できませんし、1つ上のモデル(レッドゴー120)は、質量が20kg近くあるので持ち運びには不向きになります。
交流アーク溶接機と直流アーク溶接機の違い。
交流溶接機と直流溶接機の違いは、電流の流れに違いがあります。上のイラストを見ると、直流の電流は常に一定方向に流れていますが、交流は電流の流れる方向が行ったり来たりと周期的に変化しています。DIY用の溶接機は、電圧が低いので、電圧や電流が不安定になるとアークも不安定になり、溶接ビードの仕上がりにも影響がおよびます。電流の流れに違いがあると電圧はどのように変化しているのか下で見てみましょう。
それぞれをオシロスコープで電圧信号の波形を表示させてみると、直流は図1のように水平な一本線になっていますが、交流は図2のように周期的に波打った線になっています。直流は電圧が安定していますが、交流の電圧は上がったり下がったりと不安定な状態になっているのがわかります。溶接機は電圧が不安定だとアークが発生しにくくなったり、溶接ビードが細く盛り上がり溶け込みが悪くなる現象がおこります。なので、低電圧用(DIY用)の溶接機の場合は、アークが断続になる交流溶接機より、電流の調整が行える直流インバーター溶接機のほうがアークが安定するのでおすすめです。
インバーターとは
家庭のコンセントから流れてる電気は交流です。直流溶接機は交流を直流に変換していますが、インバーターは、家庭用電源の交流を直流に変換するのではなく、高速で動作するスイッチングトランジスタと制御回路で構成されており、直流を交流に変換する回路です。
従来の直流溶接機は「交流」→「トランス」→「整流器」→「直流」に変換して出力していますが、インバータ溶接機は「交流」→「整流器で直流変換」→「インバータ回路で交流変換」→「トランス」→「整流器」→「直流」に変換して出力とするという面倒な順路をたどって直流に変換しています。
なぜ、こんな面倒くさいことをしているかというと、「インバータ回路で交流変換」するときに周波数の高い交流にできるからです。溶接機の中で一番重いのはトランスの中で使われている鉄心ですが、トランスにかける交流の周波数が高ければ高いほどトランスの鉄心の厚さを少なくして軽量化することができます。なので、インバータ回路で周波数の高い交流に変換することで、質量が100kg以上あった重たい溶接機が半分以下の質量になり軽量化を実現することができました。さらに100A以下の小容量溶接機は10kg以下にもなりました。
交流溶接機に比べ直流インバータ溶接機はアークが安定し溶け込みもよくなり良いことずくめですが、価格が交流溶接機より高価になる欠点もあります。
スパーク
同じDIY用のホームアークナビプラス(交流溶接機)は、ブラッシング法で溶接棒先端を赤くしなければ、アークを発生させるのが困難でしたが、アイマックス60は、そんな面倒な手順をふまなくても、溶接棒を母材にコツコツと軽く叩けば(タッピング法)簡単にアークを発生させることができました。恐らくセミプロやプロ用の溶接機ではこれが普通なんでしょう。
しかし、条件によっては溶接棒が太くなるほど、スパークからアークにつなげるのが難しくなることも。その場合は、捨て板などに溶接棒先端をマッチのように擦り、溶接棒先端を赤くしてから、溶接箇所に近づけたほうがアークを発生させやすかったです。
アーク
交流のホームアークナビプラスとは比較にならないほど、スパークやアークが安定するのではじめて使ったときは感動しました。アーク中の音も「バチバチバチ」ではなく「シャワシャワシャワ」という軽い感じで、感覚的に電流が安定しているのがわかります。また、溶け込みもいいので、溶接後に金属同士が繋がってないような失敗はほとんどなくなりました。癖のあるホームアークナビプラスに鍛えられたこともありますが、こちらのモデルのほうが比較的に溶接が簡単に行なえるので楽しく感じるはずです。アークが安定して継続すると、溶接ビードの仕上がりも綺麗になります。
使用率
使用率は20%になっていますが、溶接棒を連続で15本(2分以上)使用したにもかかわらず、使用率オーバー防止機能は働きませんでした。溶接棒がもったいないので検証は15本で止めましたが、同じ使用率のホームアークナビプラスより、倍以上の溶接棒を一度に使用できる結果に。
(追記(1/29):どうも使用率は電流MAXの状態で使用した場合の数字なので、ダイヤルを30Aにして使っていたので、記載されている使用率より長く溶接することができたようです。)
ちなみに、家庭の100Vの電圧を使って溶接する場合、使用できる溶接棒のサイズが2.0mmまでと限られてしまうので、これ以上の上位モデルを選んでも利点はないと思っていました。けれでも、1つ上のアイマックス120は100Vで使用した場合の使用率が100%と記載されていたので、いくら連続使用しても本体を休止させる必要がないようです。
DIYですと使用頻度が低く溶接範囲も少ないと思うので使用率20%で十分ですが、使用頻度が高く溶接範囲が多い用途では、1つ上のアイマックス120を選んだほうがよいと思います。100/200V兼用・直流インバーターだけあって、価格は一気に高価になります・・・。
機能
電流調整ダイヤル機能
ホームアークナビプラスにはなかった電流調整を行えるダイヤルがあります。ダイヤルを右に回すとスイッチがONになり、さらに右にまわしていくと電流を高くすることができます。
ダイヤルゾーンに最適な溶接棒のサイズが表示されているので、使用する溶接棒のサイズに適した電流調整が初心者でも簡単におこなえました。ちなみに、溶け込みの深さは電流の大小に影響するので、例えば1.6mmの溶接棒で溶接をおこない、溶接棒の溶け込みが悪かったり、アークが不安定な場合は、ダイヤルを2.0mmの場所に合わせれば電流をあげられるので、トラブルを回避することもできます。
ケーブルハンガー 素早く収納
ケーブルハンガーと収納ポケットがあるので、後片付けも段取りもスムーズに行えます。自分は、電源コード・アースクリップ・グリップのコードを全てケーブルハンガーに巻き、収納ポケットにアースクリップとグリップを収納しています。ホームアークナビプラスはケーブルハンガーがなく、小さな収納ポケットに3本のケーブルを収納させることが難しかったのでこれはうれしい機能でした。
質量は5.5kgと片手で持てるほど軽く、紹介している溶接機の中で一番軽量なので、一番最初に持ったときに見た目とサイズからイメージした重さと全然違うのでおどろきました。
まとめ
手溶接で綺麗に仕上げたいなら直流インバーター溶接機
インバーター制御により交流溶接機(ホームアークナビプラス)より、出力電流が安定していて、スパークしやすく溶け込みもいいので、手棒溶接機の中では個人的におすすめのモデルです。
ホームアークナビプラスより強度の高い溶接が行なえるので、家具だけでなく体重をあずけるような物も溶接することができると思います。
初心者でも簡単にアークが発生させられる半自動溶接機もありますが、たまにつかう程度で、溶接範囲が少ない場合は、比較的安価な手溶接棒のアイマックス60でも十分だと思います。
使用頻度が高く溶接する範囲が長い場合は、半自動溶接機(アーキュリー80)初心者でも簡単にアークの発生がおこなえ、溶接棒ではなく長いワイヤー線を使用するので、溶接棒を交換する手間がかからない利点があります。