「廃材」を使ったアートというと、どうしても「懐かしい」などという言葉で紹介されがちです。でも、Jason Waldronさんの作品は違います。
彼が製作の素材としているのは、生まれ育ったアメリカ・オレゴン州の原野に落ちている枯れ木をメイン。他にはスクラップ置き場にある金属なども組み合わせて作られています。
これらの素材は、作品に落ち着きや重厚感をもたらしてはいるものの、この種のアートにありがちな「ノスタルジー」をさほど感じさせないのが不思議です。
Waldronさんによれば、神が作品へのインスピレーションを与えてくれると言います。生き生きとした動物たちは、そのような精神の表れなのかもしれませんね。
ワークショップのステージともなっている彼の工房はとてもシンプル。材料置き場と、回転する作業台、そしてテーマを実写した写真。動画で見える範囲以外には、金属加工用の道具などもあるそうです。
しかしそのような舞台裏は全く見せないのが功を奏し、回を追うごとに、完成していく作品に目が釘付けになってしまいます。
制作過程に関するWaldronさんの説明はどれも興味深いものですが、大きな金属片を使い、円形のサビをうまく生かして北米でも人気のあるred tail hawk(アカオノスリ)にしようと思いついたということ。
また、馬のオブジェでは、左右半身ずつ作ることによって対称性を保ちつつも、片方では競走馬を模した眼帯を施し「静」を、もう片方では自然のままの表情で「動」を表しているといい、構成に深みを感じました。
現在は「アメリカワシミミズク」の制作が進行中のようで、その完成が楽しみです。